犬の病気・健康

【獣医師執筆】愛犬がケガをしたときの応急処置と予防方法を解説

2023年6月8日

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元気に走り回るわんちゃんは、室内外問わずケガをしてしまうこともあります。

万が一、愛犬がケガをしてしまった時の応急処置や、ケガをしないための予防方法を知っておく必要があります。

ここでは犬に多いケガや予防策について解説しています。

この記事の結論

  • 犬に多いケガは「骨折・ねんざ・脱臼、切り傷・擦り傷、噛み傷」から誤飲誤食・やけどまでさまざま
  • ケガをしていることがわかったときにできる応急処置は、無理せず動物病院がおすすめ
  • 何かあったときに対処するのではなく、事前にできる予防でケガのリスクを減らす
  • ケガをしたところは舐めることも多いが、唾液には細菌も含まれているため、やめさせる必要がある

執筆・監修

杉山 杏奈

杉山 杏奈

獣医師

麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、動物看護士・トリマーの専門学校で教員を行う傍らトリミングのライセンスも取得。その後、ペット保険会社、動物病院向けの専門商社に勤務。現在は2児の母で子育て奮闘中です。

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愛犬のケガには気付けるもの?

言葉が通じる人間であれば、痛みやケガを相手に伝えることができるものの、犬と人間ではそれができません。

そのため愛犬がもしケガをしていても、飼い主さんがそれに気付く必要があるのです。

愛犬のケガに気付けるようになるためには、普段から愛犬のことをしっかりと理解し、ケガをしてからの違いに気付く必要があります。

まずはどんなケガが多いのか、その種類を把握しておき、定期的にケガがないかを確認するのが良いでしょう。

犬に多いケガの種類

まずは犬の場合、どんなケガが多いのかその種類についてご紹介します。

骨折・ねんざ・脱臼

高いところからの落下での骨折や滑ってしまっての脱臼が多く、意外と室内でおこるケースが多いです。

例えば、ソファや階段、子供が抱っこして落としてしまうなどの落下事故のケガや、フローリングで走り回って滑ってしまって脱臼するなどです。

犬の中でも特に骨の細い小型犬(チワワミニチュア・ピンシャーなど)はより注意が必要となります。

切り傷・すり傷

お散歩などで茂みに入ったり、駆け回っている際に切り傷やすり傷をつくることがあります。

意外と分かりづらく見落としてしまいがちで、大きく腫れたり悪化した後に気が付くケースが多いのは「肉球の間のケガ」です。

木の枝などが刺さってしまったりすることもありますので、お散歩から帰ったら四肢の肉球を開いてケガをしていないか確認してあげるといいでしょう。

噛み傷

多頭飼いやドッグランなど複数の犬が集まる場所では、じゃれあったり、喧嘩をした際に嚙まれてしまうことがあります。

噛まれてしまった際、状況によっては治療費を請求することもあるため、相手の飼い主の連絡先を聞いておきましょう。

誤飲・誤食

散歩のときや室内で異物を誤飲してしまうケースがあります。

特に初めて犬を飼うという人にとっては、何が危険物になり得るのか判断が難しいところもあると思います。

人間の小さいおもちゃ・壊れた犬用おもちゃの破片・ひも・針金・人薬などは多い誤飲物ですので気を付けましょう。

やけど

ホットカーペットなどの暖房機器によるものやお風呂への落下事故、特に最近では高温になったアスファルトが原因になるケースも増えています。

飼い主さんを追ってお風呂までついて行ったり、料理中にはキッチンに入ってきてしまい、コンロに近づいたりと。

意図せずこうした危険にさらされることもあるため、入って良い場所とダメな場所を、愛犬に理解してもらう必要があります。

愛犬がケガをしたときに飼い主ができる応急処置

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普段は大人しい愛犬でも、応急処置をしようとすると傷が痛くて暴れたり噛みついたりして抵抗するケースがあります。

そのため、まずは口輪をつける・紐やタオルで口を固定するなどして、嚙まれない状況を作ることが大切です。

一般的に動物は人間よりも痛みに敏感と言われています。

また、動物病院に連れていくまでの間、患部を舐めさせないようにしましょう。

骨折・ねんざ・脱臼の応急処置

骨折や脱臼の場合は添え木をあて、周辺の関節部分ごと動かないように包帯などで巻いて固定します。

強く巻きすぎると血流を阻害してしまうため、注意が必要です。

添木などが難しい場合にはペット用ストレッチャーやケージなどに入れ幹部を動かさないように急いで動物病院に連れて行きましょう。

切り傷・擦り傷の応急処置

生理食塩水または水で汚れを落とし、ガーゼなどを押し当てて止血します。

特に出血が多い深いケガの場合は患部を包帯やタオルなどで縛って止血します。

人間用の消毒薬などは刺激が強いものもありますので、使用せずにそのまま動物病院に連れて行きましょう。

噛み傷の応急処置

生理食塩水または水で汚れを落とし、ガーゼなどを押し当てて止血します。

切り傷・擦り傷と同様に、人間用の消毒薬は使わないように注意が必要。

感染症のリスクがあるため、動物病院に連れて行きましょう。 

誤飲・誤食の応急処置

愛犬が飲み込んだものが何であるかが分かっている場合は、動物病院に連絡をし、飲み込んだものや大きさを伝え指示を仰ぎましょう。

自分での催吐処置はとても危険ですのでやめましょう。

誤飲が疑われる症状(吐く、震える、顔面蒼白など)が出ていて、何を飲み込んだのかわからない場合は、直ぐに病院へ連れて行きましょう。

やけどの応急処置

まずは患部を冷水や氷、冷たい濡れタオルなどで熱感がなくなるまで冷やします。

犬は体毛で覆われていますので、痛がらない程度に毛をかき分けて患部を冷やします。

重度のやけどで皮膚がめくれてしまっていたり、水ぶくれが出来てしまっているときは患部を冷やしながら直ぐに動物病院に連れて行きましょう。

愛犬のケガを予防する方法

何かあったときのために、応急処置の方法を知っておくことは重要です。

その上で、事前に予防できるように対策も行っておきましょう。

骨折・ねんざ・脱臼を予防する方法

階段やソファなどの段差にはステップを置き、飛び降りを防止しましょう。

フローリングなどの滑ってしまう床はラグやマットを敷きましょう。

足裏の毛や爪の伸びすぎもフローリングで滑りやすい要因のひとつですので、定期的に爪切りや足裏の毛はカットしましょう。

ベランダなどの高所の窓を開けっ放しにするのは止めましょう。

きり傷・擦り傷を予防する方法

散歩中の落下物(釘・鋭利や枝・ガラス・プラスチック片など)や茂みの木や草などに注意しましょう。

柔らかい草だけだったとしても、地面が見えていなければ何が落ちているかはわかりません。

噛み傷を予防する方法

散歩中のリードコントロールで犬同士の接触を極力避けることが大切です。

他の犬から噛まれるということは、その犬への飼い主さんによるしつけが出来ていなかった、もしくは目を離してしまったということでもあります。

自分自身がそうしたケースで加害者側とならないよう、しつけやトレーニングはとても重要です。

また同時に、ドッグランなどでは目を離さずに注意しましょう。

誤飲・誤食を予防する方法

ゴミ箱を蓋つきのものにするなどしてゴミをあされない環境を作りましょう。

小さい子供がいる家庭では、子供の遊び場に犬が入れないように、ゲートで仕切るなどの工夫をすることも必要です。

散歩中に夢中になって探索している時などは、興味を持ったものを誤飲しやすいので特に注意しましょう。

犬が届くところにものを置かない、万が一誤飲事故が発生しても何を飲んでしまったのか分かるように、日ごろから室内の整理整頓をしておくことも大切です。

やけどを予防する方法

真夏はアスファルトでのやけどや熱中症予防のため、日中の散歩は避け、早朝や夜の散歩に切り替えましょう。

ストーブなどやけどの恐れがある暖房器具には近づけないように柵などをもうけましょう。

愛犬がケガした箇所を舐めてしまう理由は?

犬に限らず哺乳類は傷口を舐めて殺菌するという本能的な習性があり、舐めることで自己治癒しようとしています。

また、舐めることで不安やストレスを和らげ、安心感を得ています。

唾液には傷を治す酵素以外に、化膿を引き起こすような細菌も多く存在しているため、傷口を舐め続けることで状態が悪化し舐性皮膚炎を引き起こすことがあります。

また、傷口からでている傷を治すための有効成分を舐めとってしまうと、傷の回復が遅くなってしまいます。

そのため、怪我したところを舐め続けることはデメリットの方が多く、やめさせる必要があります。

愛犬のケガした箇所を舐める行為をやめさせる方法

本能的に傷口を舐めてしまうことは仕方のないこと。

しかし、傷の回復が遅くなってしまう以上は、やめさせる方法も知っておくと良いでしょう。

エリザベスカラー

犬の首の周りに巻くエリマキトカゲの襟巻に似た形の保護器具です。

着用することで傷口に舌が届かなくなり舐めることを防止できます。

いろいろなサイズがあるので愛犬に合ったサイズを選ぶ必要があります。

口輪

口輪をつけると強制的に口を閉じさせることになり、傷口を舐めたり噛んだりできなくなります。

ずっとつけていることはストレスになるため、愛犬の様子を見ながら検討してください。

包帯やガーゼ

化膿した状態の傷や、術後直ぐの傷などに利用されることが多いです。

部位によっては口や足で包帯を取ってしまうこともありますので、エリザベスカラーや洋服などと併用して使用します。

洋服や靴下

乾いている傷であれば、患部を完全に覆うことができる服や、靴下の着用で患部を直に舐めることを防ぐことができます。

完全に乾いていない傷でも、ガーゼや包帯などと併用して使用することが可能です。

普通のお洋服では覆えない場所の傷などには、専用の術後服なども市販されています。

この記事の執筆者・監修者

執筆・監修者の情報

杉山 杏奈

杉山 杏奈

獣医師

麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、動物看護士・トリマーの専門学校で教員を行う傍らトリミングのライセンスも取得。現在は2児の母で子育て奮闘中です。

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