犬の食事

【獣医師執筆】犬の肝臓病と療法食とは?肝臓の働きと注意点について

2023年8月3日

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犬や猫だけでなく、ほとんどの動物で肝臓は体の中で最も大きな臓器です。

代謝作用や解毒作用など生きていく上で欠かすことのできない、様々な機能を担っているとても重要な臓器です。

一方で肝臓は“沈黙の臓器”とも呼ばれ、肝臓の60%程度が障害を受けて初めて症状が現れることもあります。

そこで今回は、肝臓の働きから病気、具体的な栄養管理まで詳しくお話ししたいと思います。

執筆・監修

山本 茉衣子

山本 茉衣子

獣医師

麻布大学獣医学部獣医学科卒業。
大学卒業後、愛知県、福岡県、沖縄県など様々な地域の動物病院で勤務を経験。
ペットの食事についてより深く理解し、そのことを飼い主様にお伝えすることで、多くのペットの健康維持に役立ちたいと日々、勉強中。

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犬の肝臓の働きって?

生きていく上で必要不可欠な機能をたくさん担っている肝臓。

ここでは肝臓が行なっている、代表的な機能を解説します。

糖代謝

食事から吸収したブドウ糖を分解し、エネルギーに変換します。

脂質代謝

脂肪酸を分解しエネルギー源としてケトン体を生成したり、コレステロール代謝を行います。

タンパク質代謝

食事から吸収したタンパク質をアミノ酸に分解し、体内で使いやすい形に作り替えます。

ビタミン代謝

体中の代謝で必要なビタミンを蓄えます。

胆汁色素代謝

赤血球が分解された後の代謝産物(ビリルビン)を排泄します。

ホルモン代謝

脳や膵臓、副腎などの臓器から分泌されたホルモンの分解をします。

解毒機能

タンパク質代謝の際に生まれる毒素であるアンモニアや、薬物・化学物質を分解し、無毒化します。

見た目にはわかりにくい犬の肝臓病

もし肝臓の病気になってしまった場合、どのような症状が現れるのでしょうか。

一般的には食欲不振や元気消失、痩せる、嘔吐、下痢、脱水などが多いと言われていますが、これらの症状は肝臓病以外でも見られるものばかり。

最初にお伝えしたとおり、肝臓の病気は見た目ではわかりにくく、検査をしなければ分からないこともしばしばです。

より重篤な症状として「黄疸(粘膜や皮膚が黄色くなる)、内出血ができやすくなる、腹水が溜まりお腹が張っている、昏睡や痙攣、流涎」などの神経症状がみられる場合には、すぐに動物病院に相談しましょう。

病気によって違う犬の栄養管理

さて、次は犬によく見られる肝臓の病気での栄養管理について解説します。

急性肝炎

急性肝炎は特に多い病気のひとつです。

その原因はウイルスや細菌感染、中毒、膵炎や腸炎による二次的なもの様々ですが、まずは点滴などの輸液療法をおこない体力を維持しつつ、肝機能が低下している間は低脂肪食、低タンパク質、高炭水化物の食事を与えてあげましょう。

次第に肝臓の機能が回復してくると、良質なタンパク質や脂質の摂取を増やしていくと良いでしょう。

肝硬変

肝硬変とは肝障害が徐々に進行して重篤になり、いわゆる肝臓が機能しなくなる“肝不全”の症状がでている状態。

この状態ではタンパク質が分解される中で生まれる毒素であるアンモニアやメルカプタンを無毒化できないので、なるべくタンパク質を控えた食事をあげましょう。

また、脂溶性ビタミンの吸収がうまくできないこともあるので、摂取不足に注意も必要です。

肝臓腫瘍

肝臓腫瘍では正常な細胞が腫瘍細胞に置き換わり、次第に肝機能が落ちていきます。

また、血糖値のコントロールがとりきれず低血糖になる恐れもあるので、炭水化物を少量頻回で与えてあげましょう。

もし腹水がある場合では、吸収性の良いタンパク質とビタミンの補給、塩分を抑えた食事が良いとされています。

愛犬に食事を与えるときの注意点

肝臓疾患がある愛犬には、食事の与え方にコツがあります。

  • 消化に優れたフードを適量与える
  • 少しの量を頻回に与える
  • 脂質やタンパク質ではなく、炭水化物メインの食事にする
  • タンパク質を与える時は良質で吸収されやすいものを選ぶ
  • 腹水やむくみがある時は塩分を控える
  • 昏睡や痙攣など神経症状がある時はタンパク質を制限する

愛犬の様子を確認しながら、負担にならないように与えてあげましょう。

まとめ

肝臓は沈黙の臓器といわれるように、その再生する能力が高いため機能が低下しても症状が現れにくいのが特徴です。

また、一口に肝臓病と言っても様々で病気の性質も違ってくるので、状態ごとでのきめ細やかな食事管理も必要になってきます。

今回は肝臓の機能や病気、犬によく見られる肝臓病についてお話ししてきました。

動物病院では肝臓病の愛犬のための食事として、肝臓病療法食を取り扱っていることもありますが、肝臓の状態によっては適さないこともあります。

また、適切な食事管理に加えて点滴やお薬が必要になることもあるので、飼い主さんの判断で食事療法を始めず、まずはかかりつけの獣医さんに相談してみましょう。

この記事の執筆者・監修者

執筆・監修者の情報

山本 茉衣子

山本 茉衣子

獣医師

麻布大学獣医学部獣医学科卒業。
大学卒業後、愛知県、福岡県、沖縄県など様々な地域の動物病院で勤務を経験。
ペットの食事についてより深く理解し、そのことを飼い主様にお伝えすることで、多くのペットの健康維持に役立ちたいと日々、勉強中。

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