「白血病」といえば、「治らない病気」であるというイメージが強い病気ではないでしょうか。
人間の白血病は特定条件下によって少しずつ治せる病気になってきていますが、猫の場合はまた違います。
猫にも白血病は存在し、残念ながら死亡率の高い病気です。
そこで今回は、猫白血病ウイルス感染症とはどんな病気なのか、その予防方法についても詳しく解説します。
執筆・監修
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目次
猫白血病ウイルス感染症とは
「猫白血病ウイルス感染症」、名前を聞いただけでも怖い病気というのが想像に難くないように、一度発症してしまうと完治は難しいと言われています。
猫の飼い主さんにとっては他人事ではない猫白血病ウイルス感染症、今回はその症状から原因、予防法や治療まで詳しく解説したいと思います。
猫白血病ウイルス感染症は白血病?感染症?
ひとつの病名の中に“白血病”や“感染症”といった言葉が入り混じり、「どっちなの?」と困惑される飼い主さんもいらっしゃるかと思いますが、この病気の本質は“感染症”です。
つまり“猫白血病ウイルス”というウイルスによる感染症で、動物病院ではよくFeLV(Feline Leukemia Virus)とも呼ばれます。
この病気はその名前からも想像できるように、感染すると白血病を引き起こしやすくなるだけでなく、免疫不全症候群やリンパ腫といった命に関わる病気を引き起こすことも多い特徴があります。
発症した場合には完治することが難しく早ければ数週間、一般的には数ヶ月から数年で死に至る感染症です。
猫白血病ウイルス感染症の感染経路
この病気は人間や犬など他の動物に感染することはなく、猫同士でのみ感染する病気です。
感染経路は、感染している猫の唾液や排泄物などに含まれたウイルスが体内に侵入することで感染します。
よく感染が起こる場面としては、猫同士でのケンカで噛みつかれたり、フード皿やトイレの共有などが挙げられます。
特殊なケースでは感染した猫が妊娠した場合、母猫から子猫へ胎盤や乳汁を介して感染する、いわゆる母子感染も起こり得ます。
猫白血病ウイルス感染症は持続感染が大きな分かれ道
持続感染とはウイルスが常に体内で増殖している状態のことで、この持続感染をするかどうかでその後の運命が大きく変わることに。
持続感染に至るかどうかは感染したときの猫の年齢と深い関係があります。
生まれたばかりの子猫時期に感染すると、ほぼ100%が持続感染。その後、発症をしやすく亡くなってしまいますが、1歳以上の成猫ではある程度免疫力があり、ウイルスの増殖をさせず感染を跳ね除ける力が備わってきます。
そのため10%程度しか持続感染しないと言われています。
猫白血病ウイルス感染症の主な症状
まず猫白血病ウイルスに感染すると発熱や元気・食欲低下、口内炎、リンパ節の腫れなどの臨床症状に加え、貧血や白血球・血小板の減少などが2~4週間程度に渡り見られます。
その後、自分の免疫力でウイルスを跳ね除けられれば良いのですが、先にお話しした持続感染になった場合、残念ながらほとんどの猫が3年以内に以下のような命に関わる病気を発症することがとても多いです。
白血病
白血球は主に骨の中にある骨髄で作られていますが、猫白血病ウイルスがこの骨髄に侵入すると正常な白血球が作られなくなる一方で、異常な白血球がたくさん作られるようになります。
そうなると免疫力が極端に低下し病原体と戦うことができなくなるので、簡単に感染症にかかるようになってしまいます。
リンパ腫
リンパ腫は“血液のがん”で白血球の中のリンパ球ががん化する病気です。
この病気は猫白血病ウイルスに感染していなくても、猫でよく見られる腫瘍性疾患のひとつです。
ただ、猫白血病ウイルスに感染していると、その発症リスクが高くなると言われています。
重度貧血
赤血球も主に骨の中にある骨髄で作られていますが、猫白血病ウイルスが骨髄に侵入すると正常な赤血球が作られなくなり貧血に陥ります。
猫白血病ウイルス感染症のウイルス予防と治療法
幸いなことに、猫白血病ウイルスについてはワクチンが存在します。
やはり、外出する猫は不特定多数と接触し、その中にウイルスに感染している猫がいる可能性があるので、ワクチンは接種しておいた方が良いでしょう。
最も有効な予防法は“感染している猫と接触をしないこと”に尽きるので、外には出さずに完全室内飼育するのが一番安全ですね。
また、同居の愛猫が猫白血病ウイルスに感染している場合、思わぬケンカやお皿・トイレの共用などから感染する可能性があるので他の猫にはワクチンを接種し、可能な限り部屋を分ける方が無難でしょう。
一方で、猫白血病ウイルス感染症を治す方法、つまりウイルスを排除する治療法は今のところなく、それぞれの症状に対する治療でなるべく緩和してあげることしかできません。
まとめ
発症してしまうと命に関わる病気を引き起こす恐怖の猫白血病ウイルス感染症。
感染初期であっても持続感染であっても、感染猫からは常にウイルスが排出されているので、他の猫が感染してしまう危険があります。
予防のためには、完全室内飼育でお外に出さないようにするということが大切。
また、飼い主さんが媒介してしまうこともあるので外猫を触った後や、感染がわかっている猫のお世話をした後は、必ず石鹸で手を洗いアルコール消毒するよう注意しましょう。
感染リスクがある生活環境の猫はかかりつけの先生と相談し、ワクチンの接種を考えてあげましょう。
この記事の執筆者・監修者
執筆・監修者の情報
獣医師、潜水士、株式会社Ani-vet代表取締役、犬猫生活財団評議員
大学卒業後、動物病院での診療や保護猫活動の支援に携わる傍ら、現役獣医師によるメディアでの知識啓蒙にも取り組んでいる。
獣医学生時代に保護猫を迎えたことから猫にどハマりして、今では3頭の元保護猫と暮らしています。
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