猫の食事

【獣医師執筆】猫の療法食とは?種類や食事療法について解説

2023年5月2日

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猫の療法食とは?種類や食事療法について解説

特定の持病を持っている子に対して、獣医師の指示の下で処方される療法食。

一般的に水とフードだけで良いとされている総合栄養食とは、どういった点で異なっているのか、疑問に思う飼い主さんも多いはず。

食事療法のひとつとして選ばれる猫用療法食とは?どんな種類があるのか?

そんな飼い主さんの疑問にお答えすべく、獣医師執筆の下、詳しく解説します。

執筆・監修

長谷川 諒

長谷川 諒

獣医師、潜水士、株式会社Ani-vet代表取締役、犬猫生活財団評議員

大学卒業後、動物病院での診療や保護猫活動の支援に携わる傍ら、現役獣医師によるメディアでの知識啓蒙にも取り組んでいる。

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猫用キャットフードの種類

キャットフードの種類と目的

動物病院やペットショップにずらっと並ぶ様々なフード。最近では色々なメーカーからペットフードが販売されているので、その種類も多くわかりづらいですよね。

ペットフードのほとんどは、その目的から大きく「総合栄養食、療法食、間食」の3つに分けられます。

これに加えて副食・一般食と呼ばれる、食いつきを良くするなどの目的となる、その他の目的食です。

総合栄養食

総合栄養食とは、毎日の主な食事として与えるフードのことで、ペットフード公正取引協議会が採用する基準に沿っていれば、総合栄養食との表記が可能になっています

成長段階に応じた総合栄養食と水を摂取することができれば、必要な栄養を満たすことができるように計算された、栄養学的にバランスの取れた食事です。

日本のペットフード公正取引協議会が採用する栄養基準については、アメリカのAFFCO(アメリカ飼料検査官協会)が定める栄養基準を採用しています。

療法食

特別療法食や処方食とも呼ばれるフードは、病気の治療や症状緩和のために特別に栄養バランスが調整されています。

総合栄養食とは異なり、「まずは療法食を選ぶ」というものではありません。獣医師の指示があった場合にのみ、選択する食事となっています。

健康な状態では必要のない、むしろ与えない方がいい場合もあるので、必ず獣医師の指導・指示のもとで与える食事です。

おやつ・間食

副食やおかず、栄養補助食と呼ばれることもありますが、間食と表記されているものは基本的におやつのような扱いです。

ご褒美として、限られた量だけを与えるフードなので、あげすぎには注意しましょう。

総合栄養食の食いつきが悪いときにトッピング程度として加える、といった使い方もあります。

愛猫のキャットフードはどの種類?

飼い主さんの愛猫が、いま食べているフードの表記を確認してみてください。

食べているフードの目的は商品パッケージなどに記載されているので、そちらを確認してみてください。

もし、そのフードが間食だったり、獣医さんの指示がないまま療法食を食べているようであれば、すぐに切り替えを考えましょう。

主食がおやつや療法食では必要なカロリーが足りなかったり、栄養バランスの偏りから病気や体調を崩す原因にもなりかねません。

一度、しっかりと確認をしてあげましょう。

そもそも猫の食事療法とは?

食事療法とは病気の診断がついたりや健康に不安がある状態を食事で治療する方法で、この時に使うフードがいわゆる“療法食”です。

療法食は栄養素の量や比率の調整、原材料に特殊な加工をして製造され、獣医師の指導に基づいて処方されるものです。

つまり言うなれば、療法食は病気の治療のために処方される“薬”のようなものなので飼い主さんの判断で開始するとかえって危険なことがあります。

漠然と「危険がある」と言われてもフードが少し違うぐらいで、いったい何がそんなに危ないのかと不思議に思われる方もいらっしゃると思いますので、身近な例をご紹介します。

腎臓病療法食

猫でダントツに罹患率が高い腎臓病。慢性腎臓病の場合、病気の進行を抑制するため、タンパク質を制限した食事内容が推奨されています。

そのため腎臓病療法食では、どれもタンパク質含有量が極端に少ない栄養バランスに抑えられています。

腎臓病の治療にはこの食事療法が必要不可欠ですが、これを健康な子が食べ続けると栄養バランスの偏りから問題が出てきます。

体を作る上で重要なタンパク質があまり摂取できないので、筋肉が維持できなくなってしまい、痩せる原因になりかねません。

肥満用減量食

愛猫が肥満かどうかの判断は案外おうちでは難しいもの。

“うちの子は肥満”と思ってらっしゃる飼い主さんでも、実際に診察をすると適正体重であることも多いです。

そのため体重の数字だけを見て肥満だと感じても、実際には体格が大きいがゆえで、全く肥満ではないなんてこともあります。

飼い主さんがこの勘違いをしたまま肥満でない子に減量食を与え続けると当然、日々の生活に必要なエネルギー量が足りなくなり、病的に痩せる原因になってしまいます。

エネルギーが足りないことによる痩せは体全体に負担をかけ、肝臓病など新たな病気を引き起こす引き金になることもあるのでくれぐれも気をつけてください。

よくある猫用療法食の間違い

近年では、飼い主さんでもネットで簡単に愛猫の健康や病気について調べることができます。

例えば

  • 猫は腎臓病になりやすい
  • 高齢になると甲状腺の病気が増える
  • 肥満になると糖尿病のリスクが上がる

もちろん間違ってはいないのですが、こういった情報だけでフードをそれぞれの病気に対する療法食に変えてしまう飼い主さんがしばしばいらっしゃいます。

「猫は腎臓病になりやすいってよく聞くから、うちの子は若い時から腎臓病療法食にしている」

「うちの子はもう高齢だから甲状腺の療法食を食べさせている」

もちろん良かれと思ってやってらっしゃるのですが、飼い主さん判断での療法食への変更は危険なことがあります。

まずはかかりつけの獣医師と相談

病気や体の状態に合わせて獣医師が指導、指示しはじめて食べることになる療法食、飼い主さんの自己判断で与える危険性をおわかりいただけたでしょうか。

療法食にはきちんと「食事療法食」や「獣医師の指導のもと与えてください」と明記されています。

そのため、与える前にそれが「療法食なのか?総合栄養食なのか?」パッケージの表記やラベルを見てしっかり確認することが必要です。

療法食には療法食の、総合栄養食には総合栄養食の長所短所があるので、飼い主さんだけの安易な判断で与え始めないようにしましょう。

今の愛猫の年齢・状態に一番合っているフードはなんなのか、まずはかかりつけの動物病院の先生に相談をしてみるのがおすすめ。

また、合わせて病気の早期発見のため、定期検診も忘れずにしてあげてくださいね。

この記事の執筆者・監修者

執筆・監修者の情報

長谷川 諒

長谷川 諒

獣医師、潜水士、株式会社Ani-vet代表取締役、犬猫生活財団評議員

大学卒業後、動物病院での診療や保護猫活動の支援に携わる傍ら、現役獣医師によるメディアでの知識啓蒙にも取り組んでいる。
獣医学生時代に保護猫を迎えたことから猫にどハマりして、今では3頭の元保護猫と暮らしています。

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