犬は年齢を重ねるにつれ1回の食事量にムラがでたり、食事量が減ったり食欲が落ちることがあります。
少しでも気になった場合は何かしらの病気が原因となっている可能性があるので、一度獣医師に相談してみることをおすすめします。
獣医師に診てもらった上で病気がなくても、愛犬の食事量の変化が気になっている飼い主さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
食事は長く健康でいるためには非常に重要です。愛犬がストレスなく十分な食事と栄養を摂れるような豆知識と工夫をご紹介します。
執筆・監修
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目次
そもそもなぜ、老犬の食べる量は減るのか?
高齢期の犬に起こる変化による原因として、次のようなものが挙げられます。
- 味覚の変化
- 嗅覚の変化
- フードの変化(シニア食、療法食への切り換え)
- 噛む力(咀嚼力)の低下
- 歯の異常(歯周病等)
- 消化機能の低下
- 食べる姿勢が維持できない
原因は犬によって様々で、対策や工夫も原因によって変わってきます。
そのため、その子に合った食事の仕方を一度で見つけることは難しいかもしれません。
そこで、それぞれの原因に対応した対策をご紹介していきますので、愛犬に合った方法や食事を一緒に探していきましょう。
犬の味覚・嗅覚の変化に合わせた対策方法
味覚・嗅覚が変化してきたら、フードへの食いつきが悪くなることもあります。
これに対してできることは、フードの嗜好性(食いつきの良さ)を高めることが効果的です。
食いつきのいいフードそのものに変更するのもひとつですが、療法食を続けている場合は次の方法でフードそのものの嗜好性を上げてあげるといいでしょう。
温めて香りを強くする
フードに適量のお湯を加えてふやかすことでフードの香りがでて、愛犬の食欲をそそる効果があります。
注意点として、与える前に必ず温度を確認して、人肌程度の状態で与えるようにしましょう。
ドライフードは通常、香りがあまり強くないため、ウェットフードなどと比べて食いつきがやや劣る傾向にあります。
ウェットフードをあげられれば簡単ですが、ドライフードでもふやかしてあげることで香りを強くすることが可能です。
トッピングを加える
近年種類が増えてきたいわゆる“ふりかけ”は、少量で嗜好性を高め、フードの栄養バランスや組成に与える影響が少ないためおすすめしています。
種類も豊富で価格的にも試しやすく、素材がはっきり明記されているものが多いので、アレルギーを持っている子にも安心して与えることができます。
主食に対してトッピングするだけなので簡単ですし、栄養もしっかり摂取することができるためお手軽です。
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犬のフードの変化(シニア食、療法食への切替)
獣医師に療法食をすすめられたが、食べてくれないというご相談を多く受けます。
介護食の話から少し脱線してしまうかもしれませんが、フードを変更する際にはいきなり100%変更するのはおすすめしません。
食べ慣れているフードと50%程度の割合で初めていき、数週間かけて移行するとストレスなく変更できるといわれています。
療法食の嗜好性を高めるためには、味覚と嗅覚の変化の欄でご紹介した方法が使えますので、そちらも試してみてください。
噛む力(咀嚼力)の低下
加齢に伴いドライフードを噛む力が衰えていくことがあります。
また、歯周病など歯のトラブルがあると固いフードを噛む際に痛みが生じ、食事を嫌がってしまうことも。
この場合は缶詰やパウチのウェットフードを与えれば食べやすいため、効果があることが多いです。
ドライフードをしっかりとふやかしてあげることで改善することがあるので、ぜひ試してみてください。
消化機能の低下
加齢に伴い代謝機能や消化機能が低下すると、一度に食べたいと感じる量が減ってきます。
そのような場合、食事を少量頻回にしてあげると、負担を少なくしてあげることができます。子犬期にやっていた食事の与え方に似ていますね。
フードの形状としては『ドライフード>ウェットフード>流動食』の順に体積当たりの栄養量が多くなります。
そのため、できればドライフードの方が胃腸に与える負担も少なくなり、おすすめです。
犬の食べる姿勢
床に頭を近づけて食事をする姿勢は前足に重心が偏り、意外と大変な姿勢です。
関節痛や筋肉の衰えにより、その姿勢を保つのが難しくなってきていることがあります。
また、その他疾病により立ったままの姿勢の維持が困難であるようであれば、楽な姿勢でゆっくり食事ができるように工夫をしましょう。
お座りの姿勢
容器を高めの位置に設置することにより“お座り”の状態で食事を与えることができます。
慣れてくればゆっくりとリラックスした状態で、食事を楽しんでくれるようになるはずです。
お皿の位置を高めにしつつ斜めにもできるアイテムがありますので、愛犬の座高に合わせて選んでみましょう。
伏せの姿勢
“伏せ”の状態で食事をさせたい場合は、必ずうつ伏せ(お腹が床につく姿勢)で行うようにしましょう。
仰向けや横向きの状態で食事をすると気管にフードが入りやすく、肺炎の原因となってしまいます。
また、うつ伏せで食事を行った後も体が横になったままだとフードが食道へ逆流し、食道炎を起こしやすくなることがわかっています。
そのため、食後は可能であれば立ち上がるかお座り、難しければ抱っこしてあげて首が上になる姿勢をとらせてあげてください。
一般的に、1分程首を上にできれば食道炎のリスクが収まるといわれています。
流動食を食べている子は特に注意してあげてください。
愛犬の介護食の選び方
介護をするような状態であれば状態が悪かったり、何らかの基礎疾患を持っていることが多いと思われます。
そのため一概に「この介護食だと大丈夫、おすすめ!」ということは難しいと考えます。
また、原則として獣医師の指示に従い、処方されたものを選択します。
どんな介護食が適しているのか、については以下のようなポイントから判断します。
- 寝たきりなのか、起立はできるのか
- 自分で食べられるのか、食べさせてあげるのか
- どのような持病があるのか
など、その子の状態によって選択する食事は変わってきます。
その子のその時の状態に合わせてどういった食事にしてあげるのか、獣医さんと相談して決めていくのが良いでしょう。
さいごに
医食同源という言葉があるように、食事は体を構成するための材料であり、動かすためのエネルギーでもあります。
また、食事をとることが愛犬にとって大きな喜びのひとつであることは、言うまでもありません。
その子にとってベストな食事の体制を整えるには多くの試行錯誤が必要になるかとは思いますが、その一助となれれば幸いです。
この記事の執筆者・監修者
執筆・監修者の情報
獣医師
幼少期よりウェルシュコーギーと育ったことが影響し獣医の道へ。
東京農工大学附属動物医療センター全科研修医課程終了後、同施設腫瘍外科にて勤務。2023年4月、東京都江戸川区に小岩どうぶつ診療センターを開業。
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